- 大手企業の経理が退屈だと思われる理由は?
- 大手企業の経理の魅力は何か?
- 大手企業で経理の楽しさを感じるための方法は?
大手企業の経理には、どのようなイメージを持っていますか?
私は、小規模な会社から大規模な会社まで、いろいろな経理の仕事を経験してきました。
(会社の規模により、経理の仕事内容は変わってきます)
その経験に基づいて、この記事では「大手企業経理の具体的な仕事内容」について解説します。
ぜひ参考にしてみて下さい。
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この記事の目次
経理の仕事の魅力
まず、経理の魅力について触れていきます。
経理の魅力は主に5つあります:
- 会社の財務状況の理解
- 経営判断の背景を知ることができる
- 専門的なスキルの習得、財務・経営の分析能力の習得
- 会社の多くの部署との交流
- 転職時に利点がある
ここからは、これらのポイントについて簡単に触れていきます。
会社の財務状況を把握する
経理の担当者は経営陣へ報告するための資料を揃えます。
ということは、経理の担当者が経営陣と同じ情報を持っているということです。
他の部署では、部門ごとのデータのみを管理しますが、経理部では全てのデータを確認します。
経営の背景を理解する
正解のない経営判断も、経営陣の決断の理由を推測し、納得するか、または異論がある場合は理論的に議論することが可能です。
経理は「会社の財務状況を理解する」という仕事をしていますから、
さまざまな経営陣の決断の背後にある理由を探ることができるのです。
例えば、
- 「なぜあの部門がなくなったのか?」
- 「なぜその商品の生産が止まったのか?」
- 「なぜ赤字の事業を続けるのか?」
などですね。
各部門の担当者は自分の部門の状況だけを把握していますが、全体像を把握できるのは経理部だけです。
専門的なスキルと分析能力の習得
経理部門では、毎月の収支の推移を確認します。
- 「売上は適正か?」
- 「粗利益は適正か?」
- 「コストの無駄はないか?」
経理の仕事は、毎月の企業動向を具体的な数値で把握しています。
具体的な数値を見ることで、動きにおかしいところがないか気付くことができるのです。
経理部門では、集めたデータの正確性を確認し、
経営陣にそのまま伝えるだけでなく、更なる分析も行います。
キャッシュフロー計算書という財務諸表を正しく理解することで、損益計算書や貸借対照表では見えないお金の動きを把握することができます。
多くの部署との関わり
経理の仕事を通じて、多くの部署との関わりを持つことができます。
売上や経費の詳細を確認するため、様々な部門の人々と関わることが増えます。
職種によってはこういう他部署とのかかわりが全くない仕事もあるので、このあたりは経理の仕事の魅力でしょう。
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経理の業界的な特徴
経理のスキルは一般的なので、すぐに業務が始められるということです。
簿記の知識を持っていると、転職時の強みにもなります。
以上で、経理の仕事における主なメリットを説明しました。
経営の核心に関わるというところも、魅力的です。
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経理の仕事の主な内容
次に、主な経理の仕事を紹介します。
経理のタスクは、大きく3つのカテゴリに分けられます:
- 日常タスク:日々の業務
- 月間タスク:月ごとの業務
- 年次タスク:年に1回または年4回の業務
これらはほとんどの企業で基本とされる業務です。
ここからは、各タスクの詳細を簡単に紹介します。
日常タスク:日々遂行する業務
- 預金の照らし合わせ
- 未収入金のリスト作成
- 支払い手続きの実施
- 勘定科目の明細更新
これらは、日常的に行われる業務です。
特に、預金の照らし合わせというのはイメージしやすいでしょう。
重要なのは、"入金の遅れ"や"未払い"を毎日確認することです。
そのため、日常業務での入金の収受や支払い状況の確認が欠かせません。
月間タスク:月に一度の業務
- 請求書の発行と受領
- その月の収益の記録
- 取引先からの購入やオフィス用品にかかった経費を計上
- 月の人件費の計上
- 部門内振替の記録
月の終わりから始めにかけては、その月の取引の集計が行われます。
さらに、部門ごとの損益振替の管理も求められます。
振替そのもので会社の損益に変動はないものの、部門間の評価を適切に行うためです。
企業により、財務報告のためのさまざまな書類や手続きがあります。
決算タスク:年に1回または4回の業務
- 決算時の仕訳の登録
- 税金の計算 (法人税、消費税など)
- 税金の申告
- 株主総会の資料作成
上場している企業では、年4回の決算が必要ですが、それ以外の企業は年に1回です(一部の非上場企業も四半期決算を採用しています)。
3月を決算月とする企業では、3月の終わりから5月の始めが最も忙しい時期となります。
この間は、日常のタスク、月間のタスク、そして年次タスクをこなすこととなります。
この最も忙しい時期は、多くの企業で残業が増えることが多いです。
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大手企業の会計に退屈さを感じる背景
大手企業における、会計の仕事の「退屈さ」というのを説明します。
これまでに紹介した会計の魅力に共感できない場合は、それが退屈と感じる理由になるでしょう。
大手企業の会計は、自分のタスク範囲が限定されているのが特徴です。
大手の会計はタスクの種類が多いため、一人が担当する業務の範囲がせまくなるのです。
また、急な人事異動に備えて、業務を分担させています。
一人の職員に頼りすぎるのはリスクと捉え、それが退屈さの一因となるのです。
大手の会計が面白くないと感じる理由は7つ挙げられます。
ここからはその理由を紹介します。
タスクが具体的すぎて大枠が掴みづらい
大手の会計は、業務が細分化されているため、どの作業がどのようにビジネスに貢献しているかがはっきりわかりません。
例えば、主な飲食業の会計業務を見てみましょう。
主な飲食業の会計業務一覧
- A部署の債権監督
- B部署の債権監督
- 支店の入金調整
- 債務情報の担当
- 固定資産監督
- 税金算定担当
- グループ統合決算担当
これらの業務を5〜10人で分担しています。
これほどの細分化は、全体像を把握するのを困難にします。
大手企業はリスクを避ける傾向がある
このようにたくさんの種類の業務を複数のスタッフで対応すると、ミスが増えるリスクが上がります。
そして、人事異動の際の業務引継ぎも大変になります。
シンプルな作業が中心
業務の細分化にあたって、シンプルなタスクが主な業務になります。
これは企業にとってはミスのリスクを減らす方法として理想的ですが、それぞれの職員にとってはルーチンワークとなり、刺激が少ないです。
大手企業はリスクを避ける傾向がある
会計の間違いは税金へ影響を及ぼします。ミスが生じると、税務調査で指摘されるリスクが上がります。
企業は、スタッフがやりがいを感じられる環境にすることは大切ですが、正確な経営が最優先です。
業務経験の範囲が限られている
大手企業の経理チームの多くは、だいたい5~10人で分担しています。
大規模なグローバル企業、例えばソフトバンクグループや楽天のような企業では、多くのスタッフがいますが、主に経理に関わっているのはこの程度です。
全ての業務範囲をカバーするのは難しい
仮に経理チームが10人であった場合、1年ごとに業務の担当が変わると、全ての業務を経験するためには10年が必要です。
加えて、10年前の業務は法の変化やシステムのアップデートで変わっているため、最新の知識を持っていることが求められます。
大手企業で経理業務の全てを完璧に理解している人は、実は稀です。
小規模企業では全ての業務に携わることができる?
中小企業の経理担当者は、全ての業務を1人でこなすことがよくあります。
取引の数が大企業と比べるとずっと少ないからです。
経理でたくさんの経験をしたいなら、大手企業より中小企業での就業が現実的かもしれません。
独自の方法を業務に活用するのが難しい
大手企業の経理部門では、業務手順が明確に決められており、最適化されています。
そのため、独自の方法で業務を進めることはできません。
例えるとすると、「簿記を学ぶ際、常に答えを見ながら問題を解く」という状態に似ています。
自分の業務に価値を見出すのが難しい
経理では正確な数値を出すことは必要不可欠ですが、実務では問題解決の能力も関連しています。
経理業務において、自分の価値を見出すことができないと、転職を希望する際のアドバンテージを得るのが困難となるでしょう。
転職の可能性は常に存在します
転職するつもりがない人でも、企業の経済状態は常に安定しているわけではありません。
何らかの事情で引っ越すという場合も考えられます。
転職が必要になった時に、すぐに自身に価値を見出すのは大変です。
他の部署とのコミュニケーションが限られている
大規模企業では、一つのフロアで数百人が働いています。
中小企業の経理では、各部門と密接に関わるため、コミュニケーションをとる機会が増えます。
しかし、大規模企業では、特定の範囲の業務を担当するため、他の部署との関わりが少ないのが一般的です。
関わりが少ないと、新しい情報や新しい発見をするのが難しくなります。
もし「仕事は仕事」と区別しているのであれば、企業内の動向に動じる必要がないので、それが良いのかもしれません。
経験と年齢が重視される体制
大規模企業では、年を重ねるごとに昇進するのが一般的です。
中途採用でも、個々の能力に関わらず、入社時の年齢に近い役職に配置されることがある。
給与の増加が期待しにくい
この体制の下では、若手の昇進や給与の増加は期待しにくいです。
このような状況下では、働く意欲やモチベーションが下がることもあります。
確かに、年功序列の中で能力を発揮する人が昇進することもありますが、上層部からの評価を得ることが必要です。
適切な評価を受けるのは簡単ではない
実際に、優れた部下を昇進させる能力があっても、自身の待遇に変化がないと、評価してくれる上司は少ないです。
年功序列の制度は良い点もありますが、やりがいを感じるのは難しいと言えます。
経理が外部の人と関わる機会が限られている
経理の業務上、外部の方々との関わりがあまり多くありません。
特に大手企業の場合、外部の方々との会議への出席は、一部のスタッフだけで担うことが多いです。
重要な「お客様」という存在に、経理の立場で関わる機会は、ほとんどないと言えるでしょう。
顧客と距離があると感じるデメリット
「お客様」との関わりが薄いと、売上のデータを受け取った際、ただの数字の羅列に見えることがよくあります。
更に、どんな製品やサービスを提供しているのかを知らないスタッフも少なくありません。
製品の詳細を知らなくても経理の業務は可能
私自身、ホールディングスの企業で勤務しており、子会社の業務内容に関して詳しくない部分も多いのですが、それでも経理や決算の業務はこなせています。
一方、営業担当者は、自分が携わった製品が売れると、その達成感でモチベーションが上がります。
しかし、経理担当者は、売上が伸びても、モチベーションに関係することは少ないと感じます。
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大手企業の経理職での楽しみ
ここからは、なぜ大手企業の経理の職務が魅力的であるのか、その理由をお伝えします。
これまで、大手企業の経理の職務の退屈さについて触れてきました。
その情報を知ったことによって、「大手企業の経理では働きたくない」と思った方もいるかと思いますが、ご安心ください。
大手でしか経験できない業務内容が存在します。
多くの知識を持ったスタッフが集まる環境だからこそ、その業務には深いやりがいがあるのです。
大手企業の経理職の魅力、5つのポイントを紹介しましょう!
- 高い会計技術の習得が可能
- 知識豊富な同僚との交流から多くの学びがある
- たくさんの種類のセミナーへ参加することができる
- 予算の拡大による業務の委託の機会
- 転職活動の時利点がある
特定の業務を深く学ぶ魅力
大手企業の経理では、全ての業務を経験することは難しいですが、特定の業務に集中して深く学ぶことができます。
特定の業務を深く学べると、その領域での専門的な知識が増えます。限られた業務範囲をポジティブに捉えることができます。
この結果、公認会計士を凌ぐ深い知識を持つスタッフもいます。
- 税務の知識
- 連結業務の知識
- 税効果に関する知識
これらの領域はとても奥が深く、経験を積むことで、その知識はますます深まります。
その知識を活かすと、更に仕事に充実感を感じることができるでしょう。
知識豊富な同僚との交流の魅力
経理の理想は「たくさんの種類の業務を深く理解して進めること」です。たくさんの周囲の業務をこなせば、企業全体の動きが理解できるはずです。
大手企業の経理は「専門性が求められる」
現実には「たくさんの種類の簡易な業務の理解」か「特定の業務の深い理解」が必要となります。
小規模企業では、経理の業務は「たくさんの種類の簡易な業務の理解」が求められます。
さまざまなセミナーに参加することができる
大規模な会社は、中規模や小規模の会社と比べると、多額の資金が配分されることが多いです。
中規模や小規模の会社は、有料のセミナーに参加したいと思った際、コストを極力削減して節約する傾向があります。
経理や管理の部署のスタッフに、会社の資金を使って学びの場を提供しない組織が以前は一般的でした。
大規模な会社は学びの場をしっかりと提供している
それに対し、大手の会社は経理や管理の部署に十分な予算を配分し、そのスタッフに継続的な学びの場を提供しています。
株式上場している企業は、有価証券報告書やIRの情報提供が義務付けられており、投資家に対して質の高い文書を作成しなければなりません。
そのため、組織としては、管理部門のスタッフにも質の高い文書作成の能力を求め、学ぶ機会を増やしています。
高等教育機関のような高額な研修は難しいかもしれませんが、数万円程度の研修であれば提供してくれることが多いです。
業務を外部に委託するための資金が配分される
先ほど書いた研修の機会に続き、基本的な業務を外部に委託するための資金も配分されています。
なぜ大手の企業は外部に業務を委託するのか?その背後には3つの主な理由があります。
- 業務委託ならば、どのような状況でも業務を遂行してくれる
- 自社の従業員に特定の知識を習得させたい
- 直接雇用するより、人件費を削減できる
従業員の突然の退職にも柔軟に対応
もし従業員が予期せず退職した場合、新しい人を雇用し、仕事の引き継ぎが必要です。
もし委託先が業務を完遂できない場合、支払い義務が発生しないため、リスクは少ないです。
また、ルーチンワークを委託先に任せ、自社の従業員には判断力を必要とする業務を委ねることができます。
これは、より専門的な知識の習得に繋がります。
人件費の削減が可能
社員を正社員として雇用すると、以下のような費用が発生します。
- 基本給や手当
- 社会保険料
- 労働保険料
- ボーナス
- 退職金
一般的には、年収400万円の従業員を雇用すると、約600万円の人件費が発生すると考えられます。
さらに、業務委託費用は消費税の対象となるため、税額控除の対象として計上できます。
大企業の経理の職員として、日常的な業務を外部に委託し、より専門的な知識を習得することができるのです。
転職の際に有利な経験を積むことができる
大企業の経理部門での雇用は、中小企業と比較して、非常に競争率が高い。
経理の仕事だけでなく、管理部門での勤務そのものが難関であり、大企業は従業員の離職率が低いため、新規の採用の機会も少ないのです。
大企業での経験は非常に価値が高い
そのような環境での実務経験は、転職時に大きなアドバンテージとなるだけでなく、ローンを組む際や社会的な評価にも影響を及ぼします。
大手から転職する人々の特徴とは?
「本当に大企業から転職する人は存在するのか?」と疑問に思うかもしれませんが、実際に中規模や小規模の企業に魅力を感じたという理由で転職を選択する人はいるのです。
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大企業の経理をより魅力的にする方法?
こちらでは、大企業の経理が退屈だと思ったときの対策をご提案します。
大企業の経理でのやりがいを感じるポイントや、感じにくい理由について説明してきました。
人によって「やりがいがあると感じる人」と「やりがいがあると感じない人」がいます。
やりがいを感じている間は、続けるのが良いでしょう。
仕事のやりがいを取り戻すための5つの方法をご紹介します。
デスク環境を整える
あなたの作業スペースはどのような状態ですか?
私もかつては整理整頓が得意ではなく、机の上はいつも散らかっていました。
しかし、今は机を整理し、旅の思い出やポストカードを飾っています。
このような少しの変化で、気分転換ができることがあります。
効率的な作業スキルを習得する
同じ作業を繰り返すことに飽きるのは自然なことです。
大企業の経理では、創造的な取り組みの幅が限られることがありますが、仕事を効率よく進めるための挑戦は可能です。
余った時間でしっかり休むことも大切です。
システムをマスターする
使っているシステムの全てを理解していますか?
効率的な業務には、コンピュータやソフトウェアの知識が欠かせません。
しかし、時とともに技術の進歩に追いつけなくなることがあります。
大企業の業務は効率化が進んでいますが、システムは常に進化しています。
普段の業務で使用したことがないシステムにも挑戦してみると新しい発見があります。
仕事以外の時間も大切に
仕事への取り組み方や価値観も変化していくものです。
私自身もテレワークを導入して、家族との時間や趣味の時間を増やすことができました。
テレワークを開始してからは、休日は家族との時間や趣味にあてています。
その結果、人間関係のストレスも軽減されました。
転職の選択
やりがいを感じなくなったとき、最後の選択肢として転職も考えられます。
大企業の経理の仕事は非常に競争率が高いので、転職は簡単ではありません。
「さまざまな業務に挑戦したい」や「経営側で働きたい」といった大企業では難しい希望がある場合、転職を考える価値があります。
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大企業の経理のやりがいについてのまとめ
私は多くの会社での経験を通じて、仕事の楽しみを見つける方法を学びました。
仕事に対する取り組み方を変えることで、やりがいを再発見することができるでしょう。
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